夏バテを理由に修正を滞らせていたのも今日で終わりです。体も暑さにだいぶ慣れたはずですし、またしっかり修正していきたいです。
(8月7日分から続く)
「……ずいぶんみんなに心配させちゃったな」
でも、目標を決めたせいか、今はビックリするくらいすっきりした気分だった。
「お祖母ちゃんとお祖父ちゃんには葉書で謝ることにして、美穂姉にもメールしとこう」
私はもう一度ケイタイ画面に向き直って、井上さんへのメールを打ち始めた。
21、
目標を決めた私は生まれ変わったみたいにリハビリと勉強に励んだ。みんなは不思議がったけど、私は本当の理由を一言ももらさなかった。井上さんに色々尋ねられても、全部適当にごまかしてしまった。
そして、私が特別病室から一般病室に移る日が近付いて、井上さんと飛島さんが連絡を兼ねたお見舞いに来てくれていた。
「じゃあ、やっぱり記者会見には出ないとダメなんだ……」
「ごめんね。顔や名前は公表されないけど、統合型感覚再現技術やサイボーグについて正しく知ってもらうためには望ちゃん本人にどうしても出てもらいたいのよ」
「コンピューター危機で犯人たちが『アダム――‘新しい人類’の始祖という意味――』だなんて名乗らなければもう少し違ったんだろうけどね」
ベッドに寄りかかって少しうつむいた私を励ますように井上さんと飛島さんが口々に言った。二人は丸イスを二つ並べて座っていて、なんだか少し進展したみたいだった。
「望ちゃんが記者会見に出ている時間は十五分くらいだし、答えてもらう質問も事前に提出してもらったものだけだから」
「それに、みんな望ちゃんを見れば今までのイメージが全部偏見だったってすぐに気付くさ」
「……ありがとう。どうしても出たくないって訳じゃないから、もう平気」
「良かった」
「じゃあ、そろそろ食べようか。温かいうちに食べた方がうまいからね」
待っていたように飛島さんが立ち上がってサイドテーブルを引き寄せた。サイドテーブルには飛島さんが持ってきた紙袋が乗せられていて、さっきからほんのりとソースの香りが漂っていた。
「望ちゃんは紙袋の中身が何だか分かる?」
「……もしかして、お好み焼き?」
「正解。部屋ではアメ以外のものを再現できないままだったし、望ちゃんも普通に食べられるようになったから、新田さんからプレゼント」
「新田の特製らしいぞ」
「え、そうなんですか!?」
驚いている私の前で笑顔の井上さんがお好み焼きの入った透明容器を取り出した。
「うわー」
「まだ熱々ね」
「食堂を借りるくらいなら目の前で焼いてやれば良かったんだ」
「恥ずかしかったんでしょ。
それより、望ちゃんはお箸じゃなくてフォークにする?」
「うううん、お箸で食べる」
私はお好み焼きから目を離さないで答えた。お好み焼きは豚玉のようで、ソース、マヨネーズ、青のり、かつお節、紅生姜がしっかり掛けてあった。病院食は薄味のものが多かったし、私は早く食べたくてならなかった。
「あ、ナースセンターに話してあるけど、夕食前だから半分だけだからね」
「えー!」
(後に続く)
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