ここしばらく連載小説やケータイ小説そっちのけで調べたり、考えたりしている『小説構想』の断片を掲載します。
この構想は‘未来史シリーズ’に含まれる300年後のオンライン戦争シミュレーションゲームを題材にしていて、このゲームでは第二次世界大戦直前の世界が舞台になっています。
また、文中には現実の地名、都市名などが登場しますが、これはゲーム中の世界の説明を省くためであってこれらの地域を戦場にしたいとか、政治的、社会的な主張の反映などではないことをあらかじめお断りしておきます。
では、断片は2本ありますので、楽しんでいただければ幸いです。
01
――皇帝が退位する。
世界中の団長たちの間に衝撃が走った。
この世界で‘皇帝の退位’はあの『日の沈むことのない』とうたわれた東方帝国の消滅に他ならない。
もちろん、帝国は分割されて存在するのだろうが、世界中の傭兵団が一斉に帝国の切り取りを目指して動き始めた。
02
「台湾を取りましょう」
「え、『台湾』?」
メイヴ少将の言葉にサロンにいた他の指揮官たちが一斉に戸惑いの声を上げた。
「もちろん、ここからじゃ無理ですけど、台湾だけなら私たちだけで十分取れます」
「う~ん……」
「確かに兵力的にはそうだが、台湾海峡越えはキツいぞ?」
「海岸沿いに展開して華北進攻軍に加わった方が良いんじゃないか?」
「でも、台湾全土を私たちの‘国’にできるかもしれないんですよ!」
「……」
メイヴがもう一度熱っぽく言うと、今までずっと黙っていたラジプット少将が口を開いた。
「……自分は別に構いませんよ」
「まあ、連合艦隊が出てこないんなら海峡越え自体は難しくないだろうな」
台湾の艦艇部隊を調べていたミソロク少将も言って、マサムネ少将とヤン=ウェンリー少将に振り返った。
「マサムネ将軍の揚陸が手間だろうけど、ヤンさんとラジプット将軍の傭兵団で十分制空権を取れるだろ?」
「ええ。九五式戦闘機60機なら自分のBf109とヤン=ウェンリー少将のP-36で圧倒できます」
「カタログデータならな。オレも別に反対という訳じゃないけど、間に台湾海峡があるんだぞ? バトル・オブ・ブリテンみたいになったらどうするんだ?」
「そのことについては台湾本土上陸前にペングー諸島を占領すれば大丈夫です。ペングー諸島から台湾本土までは直線距離で100キロぐらいだから中継基地としてぴったりです」
「ああ、この島か」
ヤン=ウェンリーは地図でペングー諸島を見付けて納得する。
ペングー諸島を使ってもバトル・オブ・ブリテンより条件は厳しかったが、後は機体の違いでなんとかなりそうだった。
「だが、上陸作戦を2度も行うのか?」
「そこがちょっと厳しいんですけど、ペングー諸島は実質連隊規模ぐらいの海防師団が1個守備しているだけなんです。だから、増強されることを考えても私の傭兵団だけでペングー諸島占領を担当して、台湾本土への上陸はマサムネさんとラジプット少将、ミソロクさんに担当してもらいたいと思ってるんです」
「台湾本土の兵力は海防師団を除けば1個歩兵師団と1個戦車連隊だし、その戦車も主力が九五式軽戦車っていうんじゃマサムネのB1の敵じゃないだろ?」
いつの間にか乗り気になったミソロクもマサムネを説得する。海上作戦担当としてメイヴの提案に目算がつき、しかも自分が主力になれると思って乗り気になったようだ。
「……分かった。上陸時に十分な支援が得られるなら参加しよう」
「じゃあ、決まりだな。オレが台湾総督に申し込むから、メイヴはもう少し具体的な計画案と臨時の根拠地をどこにするか決めといてくれ」
「了解。今話した計画で変更してほしいところがあったら今のうちに教えて?」
「……特にないな」
「あ、輸送船をチャーターする場合はどんな船にするのかあらかじめ言っといてくれよ? 船団を組むときに初めて知らされるなんて嫌だからな」
「輸送機も同じく。
後、ラジプット将軍はペングー諸島や台湾本土、それに臨時の根拠地にできそうな都市の飛行場を調べといてくれるか?」
「了解」
「じゃあ、今日のところはこれで解散で良いかな?」
「賛成」
「じゃあ、お疲れ」
「お疲れ」
ヤン=ウェンリーが5人の専用サロンを出ていってメイヴもログアウトした。
(やった、初上陸作戦だ!)
しかも、相手は皇帝が退位して分割されたとはいえあの東方帝国なのだ。
一般に上陸作戦は緻密な命令が必要で難しいとされていたから、メイヴは自分の提案が認められてうれしくて仕方なかった。
(私だってみんなと対等に戦えるんだから)
生まれつきの肺の障害で運動はできなかったが、メイヴことサチは強い心で思った。
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