18もようやく終盤になってきました。14日の更新では必ず公開できるよう、最後までしっかり修正を進めていきます。
(7月3日分から続く)
『そうかもしれないわね……』
「ねえ、美穂姉は認めてもらえると思う? 手を打てないんだったら認めるしかないよね?」
『……少し考えさせて。私もよく考えてみるから』
「お願い。
でも、全世界的にサイバー攻撃ができるくらいの相手なんだから、国連や政府は拒否して戦うなんてことないよね?」
私は考えている井上さんを残して視線を研究室に移した。
研究室はだいぶ落ち着きを取り戻していたけど、緊張と興奮でピリピリした雰囲気だった。私と井上さん以外は全員テレビの周りに集まっていて、食い入るようにテレビを見ている。
「美穂姉、私もテレビ見に行って良い?」
『待って。今行ってももめてるところを延々と見せられるだけよ。事務総長が正式な回答をするのは明日だし、今は止めといた方が良いわ』
「そんなにもめてるの?」
『みんながみんな犯人の話を信じてる訳じゃないから……』
振り返った私は井上さんの返事に胸が締め付けられるようだった。インターネットで見たサイボーグに反対する人の過激な主張を思い出して、パックとチョコのことが心配になった。
「……ああ、私も何かできれば良いのに」
『望ちゃん、それは私も同じ気持ちよ。きっと、研究所で働いてるすべての人が同じ気持ちだと思うわ』
「じゃあ、美穂姉は認めてくれる?」
『……まだ実感が湧かないけど、望ちゃんが生命だと感じてるなら生命なのかもしれないわね』
「ほんと?」
『ええ。望ちゃんの感覚を信じるわ』
「やった!!」
私は飛び上がって井上さんの胸に飛び込んだ。井上さんみたいな専門家が認めてくれれば国連や政府もきっと認めてくれると思った。
「ありがとう! 美穂姉!」
『ちょっと、危ないでしょ!
うれしいのは分かるけど、ぶつかったりしたらどうするの!』
「ごめんなさい! でも、ホントにうれしいの!」
すぐに井上さんから離れて私は研究室の天井近くをグルグル飛び回った。テレビを見ている人たち全員にも一人一人説明して回りたいくらいだった。
『おい、どうしたんだ!?』
「美穂姉が電子空間にも生命がいるって認めてくれたの!」
『望ちゃんも色々言ってたものね』
『とすると、やはり犯人の中にもいるのか?』
『いえ、まだ断定できないわよ。そう思わせようとしているのかも』
『ここで研究がばれたりしたら致命的だもんな』
テレビを見ていた人たちは何か言っているみたいだったけど、私はうれしくて全然耳に入らなかった。
「それより、みんなも認めてくれるよね!?」
『まあ、犯人が主張してるように生命の定義を「存在し続けようとするシステム」とするなら否定できないだろうな』
「でしょ! 電子空間にも生命がいるのよ!」
私は天井近くから大きな声で宣言した。
「美穂姉、研究所は国連や政府に『認めるべきだ』って言ったの?」
『さあ……、分からないけど、意見を求められてるかもしれないわね』
「なんとか話を聞いてもらえないかな?」
『どうだろう?
教授はどう思いますか?』
『そうだな……』
井上さんに尋ねられた教授は腕を組んで考え始めた。
そして、その間に私はテレビが見えるところまで移動して少しだけ画面をのぞいた。
「あ、新しいニュースだって」
『ちょっと、望ちゃん』
「国連で動きがあったみたい」
井上さんの注意を無視してニュースを見ていた私はすぐに言葉を失った。
『望ちゃん!』
「……そんな……」
(後に続く)
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