ずいぶん時間の掛かってしまった18もようやく完成しました。この‘修正’で初版よりも望の行動が増えたので、かなりクライマックスらしくなったのではと思います。
(7月8日分から続く)
私は後ずさって近付いてきた井上さんに向き直った。
「『武力行使始まる』ってどういうこと!!」
『え!?』
「なんでそんなことするのよ!!」
テレビでは国連本部前にいる記者が真剣な表情で武力行使に踏み切った国のことを伝えていた。その国は重要施設のシステムを占拠した犯人たちが施設を暴走させようとしたのでやむなく武力行使に踏み切ったと説明していたけど、そんなのウソに決まっていた。パックがそんなことをするはずなかった。
『おい、こりゃ「武力行使」なんてもんじゃないぞ!』
『建物ごと空爆するなんて正気か?』
『落ち着け! 全員自分の席に戻れ!
望ちゃんもしばらく部屋に戻った方が良い』
『そうよ。一旦部屋に戻りましょ? パソコンを使えばここの様子も分かるでしょ?』
「嫌! ここにいる!」
私を捕まえようとする井上さんから逃れて私は井上さんに言い返した。
「美穂姉たちは何とも思わないの! 新しい生命が殺されようとしてるのよ!」
『望ちゃんのことの方が優先よ。興奮しすぎたらダメなのは望ちゃんもよく知ってるでしょ』
「だったらすぐに攻撃を止めさせてよ! 記者会見でもなんでもして電子空間にも生命がいるって認めさせて!」
私は捕まらないように研究室の天井すれすれから叫んだ。爆撃された研究所の名前や詳しい場所はテレビに出てなかったけど、私はパックの研究所だという確信があった。軍や情報機関が関係しているという研究所はパックを‘殺す’ことをためらわなかったのだ。
「これ以上手遅れになる前に認めさせて!」
『そう言われても、インターネットが使えないから記者に集まってもらうだけでも大変よ』
「だったら他の方法でやって!」
『望ちゃん!!』
テレビを消そうとした人に気付いた私はとっさに体当たりした。体当たりされた人はのけぞりながら頭を押さえる。
『望ちゃん! なんてことするの!』
「邪魔しないで!! このテレビは絶対消させない!!」
パックやチョコの様子を知るための唯一の手段を失う訳にはいかなかった。私はすぐにテレビを守りに戻ろうとして、突然闇の中に放り出された。
19、
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……える? ……ちゃん、聞こえる……?」
「…………」
「……聞こえる? 望ちゃん、聞こえる?」
――……井上さん?
闇の中で井上さんの声がかすかに聞こえた。
でも、身体がひどく重いし、井上さんの声も遠くに聞こえる。
私はカメラが壊れたのだと思って部屋に戻ろうとしたけど、何度やっても視野は闇のままだった。
「……い、井上さん……?」
「そう、私よ。
私の声、ちゃんと聞こえる?」
「え、ええ……」
私はたった二言答えるだけで信じられないほど疲れてしまった。
(後に続く)
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