外出先で撮った写真をアップしたり、練習として書いた文章などをアップしていきたいと思います。
Posted by かば - 2008.06.05,Thu
予定どおり初版の16と17を統合して、新しい16の修正が終わりました。本当は17(初版の18。今後書く場合も同様)の修正にも入りたかったのですが、今日以降に持ち越しとなってしまいました。
(6月1日から続く)
「だったら解除してよ!」
『無理でございます。私には権限がございません』
「だったら権限のある人を連れてきてよ!!」
私は否定的なことばかり言う斉藤さんに怒鳴り返した。とにかく外に出ることしか考えてなくて、外に出るためなら何だってするつもりだった。井上さんが待っていることや北本研究室から言われたことはすっぽり頭から抜け落ちていた。
「そうだ! パックのことだからこういう状況も想定して何か残してるはずよ!」
まだコマンドを唱えていた私は急いで部屋の中をかき回し始めた。
『お嬢様、北本研究室からの要請に反します』
「それがどうしたって言うのよ! 斉藤さんもパックが残したものを探しなさい!」
私は斉藤さんに命令してかき回し続けた。机、本棚、クローゼットと、何か隠せそうなところは手当たり次第に探した。
「ほら、早く探しなさい!」
『かしこまりました。ですが、具体的にどのようなものを探せば良いのですか?』
「そんなのパックが残したものに決まってるでしょ! 私が知らないものを探して!」
『……かしこまりました』
斉藤さんは私の剣幕にそれ以上言い返さなかった。私はその間も部屋の中を散らかせるだけ散らかして必死に探した。部屋の中だけじゃないかもしれないと思って仮想環境部の中も探した。
でも、パックが残したものはなかなか見付からなくて、一旦部屋に戻った私に斉藤さんがもう一度声を掛けた。
『お嬢様、後は私が探しますので、お嬢様は井上様にお会いになった方が良いのではありませんか?』
「いい! 美穂姉には斉藤さんから適当に謝っといて!」
私は斉藤さんをにらみつけて即答で拒否した。井上さんのことを言われて気がとがめない訳じゃないけど、それ以上に見ているだけには我慢できなかった。
「……あのときとは違うもの」
交通事故のとき、私は潰れた車体と座席に挟まれて何もできなかった。私自身が瀕死の重傷だったのだからとは理解しても、私が一番軽傷――お父さんもお母さんも弟も助からなかったのだから――だったのだ。私より重傷だったのにずっと私を助けようとしてくれたお母さんやお父さんのことを思うと、今でも私は何も‘しなかった’のだと思えてならなかった。
「だから、チョコは絶対に私が助けるんだから」
私はすっかり散らかってしまった部屋の中をもう一度ひっくり返し始めた。
「そうだ! 斉藤さんはどこまで調べたの!?」
『お嬢様がご存じないと思われるファイルで比較的大きなファイル五千件のうち、二五二一件を調査済みです』
「もっと急いで! もしかしたらチョコのいるところでもここと同じようなことになってるかもしれないんだからね!」
『かしこまりました』
たとえ犯罪になったとしても家族はきっと分かってくれるに違いなかった。井上さんだって、賛成してくれないまでもきっと理解してくれると思った。
(16の終わり)
(6月1日から続く)
「だったら解除してよ!」
『無理でございます。私には権限がございません』
「だったら権限のある人を連れてきてよ!!」
私は否定的なことばかり言う斉藤さんに怒鳴り返した。とにかく外に出ることしか考えてなくて、外に出るためなら何だってするつもりだった。井上さんが待っていることや北本研究室から言われたことはすっぽり頭から抜け落ちていた。
「そうだ! パックのことだからこういう状況も想定して何か残してるはずよ!」
まだコマンドを唱えていた私は急いで部屋の中をかき回し始めた。
『お嬢様、北本研究室からの要請に反します』
「それがどうしたって言うのよ! 斉藤さんもパックが残したものを探しなさい!」
私は斉藤さんに命令してかき回し続けた。机、本棚、クローゼットと、何か隠せそうなところは手当たり次第に探した。
「ほら、早く探しなさい!」
『かしこまりました。ですが、具体的にどのようなものを探せば良いのですか?』
「そんなのパックが残したものに決まってるでしょ! 私が知らないものを探して!」
『……かしこまりました』
斉藤さんは私の剣幕にそれ以上言い返さなかった。私はその間も部屋の中を散らかせるだけ散らかして必死に探した。部屋の中だけじゃないかもしれないと思って仮想環境部の中も探した。
でも、パックが残したものはなかなか見付からなくて、一旦部屋に戻った私に斉藤さんがもう一度声を掛けた。
『お嬢様、後は私が探しますので、お嬢様は井上様にお会いになった方が良いのではありませんか?』
「いい! 美穂姉には斉藤さんから適当に謝っといて!」
私は斉藤さんをにらみつけて即答で拒否した。井上さんのことを言われて気がとがめない訳じゃないけど、それ以上に見ているだけには我慢できなかった。
「……あのときとは違うもの」
交通事故のとき、私は潰れた車体と座席に挟まれて何もできなかった。私自身が瀕死の重傷だったのだからとは理解しても、私が一番軽傷――お父さんもお母さんも弟も助からなかったのだから――だったのだ。私より重傷だったのにずっと私を助けようとしてくれたお母さんやお父さんのことを思うと、今でも私は何も‘しなかった’のだと思えてならなかった。
「だから、チョコは絶対に私が助けるんだから」
私はすっかり散らかってしまった部屋の中をもう一度ひっくり返し始めた。
「そうだ! 斉藤さんはどこまで調べたの!?」
『お嬢様がご存じないと思われるファイルで比較的大きなファイル五千件のうち、二五二一件を調査済みです』
「もっと急いで! もしかしたらチョコのいるところでもここと同じようなことになってるかもしれないんだからね!」
『かしこまりました』
たとえ犯罪になったとしても家族はきっと分かってくれるに違いなかった。井上さんだって、賛成してくれないまでもきっと理解してくれると思った。
(16の終わり)
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軽度な短腸症候群の患者で、「短腸症候群の会」という小規模な一般社団法人の代表理事をしています。
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