今までの遅れを少しでも取り戻すかのように集中して進めることができました。今後もできるときにできるだけ進めて、なんとか連載を途切れさすことなく完成させたいです。
(3月29日分から続く)
パックははっきり断言して私を見詰めた。そして、私は反論する言葉を見付けようとパックを強くにらみ返した。
12、
私が必死で反論を考えていると、パックが突然話を替えた。
「あれ、望は指輪を左手の小指に付けてるのかい?」
「え!?」
「ちょっと見せて」
「あ!」
パックは私が止める間もなく私の左手――ケイタイを持ったまま――を取った。
「ちょっと、止めてください!」
「うーん、望にはちょっと派手だったかな?」
私が慌てて引っ込めようとするのを無視してパックは指輪と私を見比べた。何かしているのか、いくら力を込めてもパックの手を振りほどけなかった。
「は、放して!」
「すぐに済むから。
望はこのデザインを気に入ってる?」
「はずないでしょ! 全然似合わないもの!」
「じゃあ変えよう。もっとシンプルなものが良いな」
「あ!?」
パックが言うとすぐに指輪のデザインが変わった。ほとんど瞬間的な変化で目が信じられないくらいだった。
「このデザインならどうかな?」
「……悪くない、です」
私は自由になった左手を胸の前でかばいながら指輪を確かめた。
新しい指輪のデザインはシンプルだけど落ち着いた大人の雰囲気で、どこかの高級ブランドにありそうな感じだった。
「金属光沢の表現が面倒でちょっと中途半端な感じになっちゃったけど、なるべく早く改善するよ」
「……ありがとうございます」
「だけど、望はアクセサリーを持ってないのかい?」
「持ってません。金属光沢や動きの処理が大変だし、ピアスは元々付けてませんでしたから」
「じゃあ、今度プレゼントしよう。研究所の外ならコンピューターの処理能力なんて気にすることないからね」
「そんな、これ以上してもらう理由なんてありません」
「そんなことないさ。望が研究所の外に出てくれたお祝いがあるし、望が新型ウイルスを生命だって認めてくれたお祝いだってしなくちゃ」
(後に続く)
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