昨日はわざとやらなかったようなものなので一昨日修正した分を掲載します。
(1月20日分に続く)
「……今度パックに会ったら抗議しなきゃ」
私は一人で騒いでしまったことが恥ずかしくなってすぐに指輪を左手の小指にはめた。
「…………」
特別何かが変わったような感じはしなかった。
それより、指輪は明らかに私に似合ってなくて少しだけへこんだ。この指輪が似合うのはモデルみたいにスタイルが良い人か、本当に格式と伝統があるお姫様ぐらいに違いない。一瞬、パックはそういう人が好みなのだろうかとさえ思った。
とはいえ、そんなことを思ったのはほんの少しの間だけで、私はすぐに新型ウイルスに手を伸ばした。
「おいで」
部屋の外に出るなら新型ウイルスを部屋に置いていく訳にはいかなかった。
けれど、新型ウイルスはうれしそうに私の手に乗ったと思ったら、さらに腕をよじ登って肩までやってきてしまった。
「ちょっと、遊んでるんじゃないんだってば!」
私はくすぐったさと新型ウイルスがふざけていると思って慌ててたものの、新型ウイルスは肩を少し動き回ったところで落ち着いた。どうやら、肩にいると決めたみたいだった。
「ちょっと、そんなところにいたら落っこちちゃうでしょ」
私が捕まえようとしても新型ウイルスは抵抗して肩から降りようとしなかった。
それに、電子空間では誰かがそうしようとしない限り勝手に落っこちたり動いたりしないことを思い出した。
「……まあいいか」
肩に乗っている新型ウイルスの温かみが心地良かった。耳元だったから新型ウイルスが立てる小さな音もはっきり聞こえた。今までバーチャルペットも飼ったことがなかったのに、なんとなくペットを飼う人の気持ちが分かった気がした。
「……後でちゃんと名前を付けてあげないとね」
私はいつまでも‘新型ウイルス’では良くないと思った。
そして、どんな名前が良いんだろうと思いながら私はコマンドを唱えた。
「え……」
初めて部屋の外に出た私は他に言葉がなかった。
(後に続く)
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